「亡くなった方達の命は戻らないけど、フランさん達は、魔界をよく変えようとしてる」
「…………」
「だからね、庵可くん。もう大丈夫だよ。二度と繰り返されない。あたし達は過去は変えられないけど、未来をよく変えることはできる」
庵可くんの呼吸が少しずつ落ち着いてきた。
「だからさ、庵可くん。そんなに泣かないでよ。顔を出して?」
小さく掠れた声で言うと、庵可くんがようやく布団から目だけを出した。
赤くはれ上がった目。
いつも少し大人っぽい顔つきの庵可くんだけど、今は幼い子供に見えた。
「庵可くんの心はキレイだね」
あたしが微笑むと、庵可くんの目が丸くなった気がした。
「そうやって人の心の痛みが分かって涙を流せるんだから」
「……んで?」
庵可くんの声は頼りなく不安定だった。
あたしは聞き取れなくて眉を上げる。
「なんで……僕を……慰めにきたの……?」
しゃくり上げながら言う庵可くんは、本当に子供のようだ。