中から、庵可くんの嗚咽が聞こえる。


呼吸も震えている。


昨日からずっと泣いてるの?


あたしは、庵可くんの丸くなる体に手を乗せた。


夏用の薄い布団は、庵可くんの震えをそのままあたしの手に伝える。


庵可くんの腕をさする。


そして、布団の上から、あたしは庵可くんの体を包み込んだ。


「庵可くん。もう泣かないで」


ギュッと抱きしめる。


今日は、いつものように香水の匂いはしなかった。


「辛いよね。昨日、あたしもあれを見て、すごくショックで言葉が出なかった」


「…………」


「信じられないけど、あれ、本当にあったことなんだよね?」


言いながら、あたしも声が震えてくる。


昨日見た光景が頭に浮かんで、涙が浮かんできた。


「フランさんは、あたし達にあれを見せることで、どんなに自分たちが惨い事をしてきたか、そして、これから絶対に同じ事を繰り返さないと強く誓ったんだと思うの」


ダメだ……。


涙を堪えられなくて、声がかれてきた。