庵可くんのタキシード姿……。
いつも制服しか見てないから、子供から一気に大人の雰囲気になって、何て言うか、ちょっと新鮮でときめいた。
元々カッコイイから、余計鼓動が踊る。
「あ!今、俺に見惚れてるでしょ」
グイッ。
庵可くんが腰を折って、あたしの顔を覗き込んでくる。
フワっと香って来たのは、普段よりも甘い庵可くんの香水。
ドキンっと心臓が跳ね、あたしはあからさまに目を逸らした。
「み、見惚れてなんか」
「あ。図星だ」
あたしの動揺の仕方に、庵可くんと梓がプププと笑う。
「それより、今日はなんかいつもと香水の香りが違うね」
あたしが聞くと庵可くんは「気づきました?」と、嬉しそうに声を出した。
さっきは大人っぽいと思ったけど、こういう反応の仕方がやっぱりまだ子供っぽい。
外見は変わっても、いつもの庵可くんのままだ。
「今日はパーティだからいつもと違うのにしました。ローズの香りが混ざってるんですよ?」
そう言って、香水をつけた首筋を指差す庵可くん。
前から思ってたけど、庵可くんはしょっちゅう香水の香りを変えてるよね?
一体何種類の香水を持っているんだろう……。


