「私はもう掃除も済んだので出ますが、サラ様はまだこちらにいますか?」


「え?うーん、もういいかな。あたし本が好きってわけでもないし」


それに、さっきのあの惨い絵を見て、少し怖くもなったし。


人がたくさんいるところに行きたい。


「では、出ましょうか」


ヘンリーは微笑んで言い、頭を少し下げながらあたしの前を通った。


あたしもヘンリーのあとをついて行こうとした、その時。


コトン……。


さっき、ヘンリーがキレイに整理した本の辺りから微かに物音がした気がした。


……なに?


あたしは首を伸ばしながら確認する。


「どうかなさいましたか?」


不審な動きをするあたしを振り返ったヘンリーも、あたしと同じように首を伸ばし不思議そうな顔をする。


「あ、ううん。何でもない。行こ?」


あたしが前を指差して言うと、ヘンリーはニッコリ笑って頷いた。


歩きながら、あたしはまた後ろを振り返る。


別に何もなかったよね?


気のせいか……。