恐る恐る足を進め、本棚をひとつ過ぎる間を覗き、また本棚を過ぎると間を覗いてと繰り返した。


下がじゅうたんの為、あたしの足音を吸収して何も物音がしない。


何個目かの本棚を過ぎたその時、ようやく人の姿を発見した。


「……ヘン、リー」


サッ!!!!!


あたしの声に、ヘンリーが勢いよく振り返る。


ヘンリーは目を大きく丸め、手にしていた何かの本を、あたしの方を見たまま背中で隠すように本棚に戻した。


「サラ様。いつからこちらに?」


驚いたままの表情で、ヘンリーはぎこちなく微笑んだ。


「ついさっきだよ」


「そうですか。何かお探し物でも?」


ヘンリーが眉を上げてあたしに聞く。


「ううん。ただ、ちょっと久しぶりにここに来てみたくなって。ヘンリーは?ここで何してたの?」


あたしは言いながら、さっきヘンリーが本を戻したところを首を伸ばして見る。


「私は掃除をしていたのですよ。ここの掃除はシキさんから任されているので」


ヘンリーはそう言って、本の乱れを直しきちっと立てた。