「もう!びっくりしたじゃん!」
あたしは小声で庵可くんに言う。
ふんわり香ってくるのは、庵可くんの甘い香水の香り。
「だって、僕のあとをずっと追いかけてくるサラさんが可愛かったからつい」
ニコッと笑う庵可くんに、あたしは顔を赤くしてしまった。
き、気づいてたんだ……。
恥ずかしすぎる。
「僕に惚れました?」
庵可くんは自分を指差しニヒヒと笑う。
あたしが目を細めて庵可くんを見ると、庵可くんは子供のように笑いながら「冗談ですよ」と言った。
「庵可くん、なんで図書室なんかにいるの?」
「え?変ですか?僕が図書室きたら」
庵可くんは思いがけないことを言われたかのように、キョトンとしている。
「へ、変と言うか……」
あたしは頭をポリポリ掻きながら、言葉を探った。
だけど結局。
「ちょっと、変、かな」
何も言葉が出てこなかった。
庵可くんは困るあたしを見て、眉間にシワを寄せながら笑う。


