別に用をたしたいわけではなかったので、あたしは鏡の前で髪を整えたりリップを塗ったりした。
右手でリップを塗りながら、鏡に映った指輪を見る。
シルバーの、真ん中にダイヤモンドのような小さな飾りがある。
だけど、きっとダイヤモンドじゃない。
本物が偽物か見分けられるわけじゃないけど、そんな感じがした。
右手を前にかざすように、薬指についている指輪をジーッと観察。
手を遠ざけたり近づけたり。
あまりにもジッと見ているから目が中央に寄っていると思う。
段々目が疲れてきて、目眩もしてきた。
ああもう、何やってんだろうあたし。
ブンブンと頭を振って、トイレから出る。
どんなにこれを観察したって何かわかるわけじゃないのに……。
あたしは疲れてしまった目を癒すように眉間を軽くマッサージしながらトイレから出ると、タイミング良くあたしの前を庵可くんが通り過ぎて言った。
他にも生徒がいたせいか、あたしに気づいていない。
でも、どうしてこんなところにいるんだろう。
1年生の教室は別校舎なのに、2年の校舎に何の用?


