「女のくせに短気とか、どこまでも可愛くないヤツだ」
ボソリと聞こえ、あたしの椅子の下に伸びてきているルカの足を思いきり踏みつけてやった。
「あ……」と小さな唸り声が聞こえ、あたしは前を向きながらざまぁみろと鼻で笑う。
だけど、後ろから妙な空気を感じ、恐怖で振り返れなかった。
きっと、今のでルカがキレたんだろう……。
あたしはそそくさと席を立ち、教室を抜けだそうとした。
「どこへ行く」
すぐにルカに呼び止められ、あたしはムッと振り返る。
「トイレ!!」
あたしも、ルカに怯えたりムッとイラついたり忙しいヤツだよね、本当……。
あたしはあたし自身に呆れながらため息をついて教室を出た。
学校ではルカから離れるなって言われたけど、さすがにトイレまではついてこないだろう。
教室の近くのトイレに行くだけだ。
早い時間に登校したおかげで、まだトイレは空いていた。
始業前になると、トイレで時間を潰す女子が多くて鏡の前は大混雑になるから。
多少ゆっくり過ごせる。


