「ねぇ、ルカ」
「…………」
隣を歩くルカに、話しかけても返事はない。
「あたし、ごく一般家庭で育ってるからさ、その、マナーとか作法とか全然知らないんだけどさ、これから、その、どんどん必要になったりする?」
どんな厳しい教育が待ってるのか気になって聞いてみた。
「なんだ。不安なのか?」
「不安っていうか。全く知らないからさ。そういう偉い人たちが集まるようなところに行ったこととかも一度もないし。もしこれから魔界でルカの隣で偉い人たちの前に立つことになったら、すんっごい前から誰かに教育してもらわなきゃいけないなと思って」
あたしが言うと、ルカはようやく立ち止まり、そしてなぜか、廊下の途中であたしを壁に押しやりルカは壁に手をついて顔を近づきてきた。
「ちょ!!いきなりなに!?」
あたしは誰も見ていないかと、廊下を左右高速で見る。
「おい。ブス。誰も見ていない」
「なっ……。ブスとか言うなら、離れてよ!!」
グッとルカの体を押しのけようとしても、ルカの体はピクリとも動かない。


