その店は
腐臭漂う路地裏にあるという。
昔流行った盛り場の奥に
ひっそりと
小さく佇む店があるという。
確証のないまま
私は歩く。
陽が暮れてもいないのに
闇の香りが身体にまとわり
誰もが心地悪くする。
じめじめとした湿気が足元から這い上がり、その店の先の道は見えない。
こんな時間なのに
もう暗く
遠く
見えない。
一歩先に進むと
引きずりこまれるだろう。
生ごみの匂いがする
いや……屍の匂い。
亡霊しか通わない
閉じられた扉が続くその奥に
店はあった。
その店が
飲食店なのか、雑貨屋なのか、はたまた占い師の店なのか……誰も知らない。
黒い壁に包まれた小さな店。
壊れた看板の字は割れている
重い鉄の扉は冷たい。
奇妙な店だった。