その店


男はもう動かない

骨と歯が残って

ゆっくり優雅に落ちてゆく。

濁った視界の隅

小さな明かりが

ガラスの向こうで見えた。

目をこらし
ジッと見つめると

ひとりの女が
鉄の扉を開け店に入ってきた。

すると
暗い大きなカーテンが水槽と彼女の間に入り、私達は遮断された。




彼女の望みはなんだろう


私達は
カーテンのこちら側

水槽の中で、女を見つめる


無数の
憐れみのまなざしで……。




【完】