その店


外から見つめていた
あのガラスの水槽の中に入っていた。

ぼんやりと水槽の中で漂うと
今までにない安堵感が身体中に溢れている。


その時

頭上から眩しい光が流れ

「やめてくれ!」

泣き叫ぶ裸の男の声と
水しぶきが静寂を突き破る。


エサだ……。

それは本能

仲間達と同時に上昇し
餌に向かって心を躍らせる。

エサだ……エサだ……エサだ……。

水槽の重い蓋が閉じられ
男は目を見開いて空気を探す。

水面と蓋の間は
人差し指一本のみ。

男は手を足を
大きく動かし
自分の顔をどうにか上にして空気を求める。

もがけばもがくほど
顔が重い蓋にぶつかり余計パニックに陥っていた。