その店

水槽に身体ごと身を寄せ
見える方の片目で
じっと目をこらす。

ガラス越しに
あの人の眼球が漂い私を見つめる。

「やってくれたな」

いつもの低い声が
聴こえない耳に届いた気がした。

頬に触るガラスの冷たさが
あぁ
なんて心地が良いのであろう。

手を伸ばすと
無数の魚がガラス越しに私に群がり

見つめる。

その憐れみを帯びたまなざしは
沢山のまなざしは

お前たちだったのか。

ガラスを抱きかかえたように私は崩れ
片目に映る水槽の奥には
彼の破片が舞い踊る。

血と肉と骨と内臓

偏見と傲慢と暴力。