「わぁ、いくちゃんありがとう」
忍者マグカップ
予想通り大喜びの桜ちゃん。
喜んでくれる顔が一番の幸せ。
「さくらはだいじにするからね。ありがとういくちゃん」
小さな手でマグカップを触って喜んでいる。
可愛いなぁ。
「こないだのアサガオネックレスのお礼だよ。ありがとう」
自分で言いながら
自宅の本に挟んだピンク色アサガオを思い出し、胸がチクリと痛んだ。
すると
「いくちゃんはエライですね」
幼稚園児に真剣に言われ
私は彼と驚いていた。
エライって?
「いくちゃんは、プレゼントをもらったらおれいをいうからエライです」
気分は園長先生なのだろうか
桜ちゃんは上から目線でうんうんとうなずいていた。
面白いな幼稚園児。
「それは当たり前ですよ、桜先生」
手を挙げてふざけて言うと
桜ちゃんはゲラゲラ笑ってから
「お母さんはいわなかったよ」
さりげなく言う。
「さくらのアサガオのネックレスあげても『ありがとう』いわなかった。さくらはおりがみがヘタだからだね」
桜ちゃん……。
「もっとじょうずにならないと、ダメだね」
「違うよ桜ちゃん。桜ちゃんはとっても上手だよ。それはきっと……」
どうにか話をまとめようとしていたら
敷地に車が入った音がした。
嫌な予感がする。



