「あれ?早いわね」
家に帰るとなぜかお母さんがいた。
いつもは六時過ぎに帰ってくるのに……。
「ただいま……」
「なに、またいじめられて帰ってきたの」
なにその言い方。バカにして。
「あんたさぁ、学校にも行けない、友達もできない。勉強は?
それもできないならね、体売るしかないわよ」
小学生に向かい、そんな言葉を投げつける。
あり得ない……この親、頭どうかしてるよ。
「外見だけはよく産んでやったんだから自分で生きていきなさいよね」
意味わかんない。意味わかんない。
お母さんの目の前の机を見ると、空き缶が何本も転がっていた。
「呑んだくれ。育てる気ないなら、産まなきゃよかったのに」
「んだと!?てめぇ誰に向かって口利いてんだよ!
ここまで育ててもらえただけ感謝しろよ!」
怒鳴り散らす母親は、もう母親には見えない。
「おまえなんか、死ねばいいのに!おまえが父親に似たせいで!
おまえなんか、おまえなんか!」
私のランドセルを引っ張り、頭を床に押しつけ馬乗りをする。
そのままお腹を殴ったり首を絞めたり。
……どんだけ呑んでんのよ。
そう思う反面、とても怖い。
「やめて…やめてっ」
そんな言葉しかでてこない。
「おまえの父親はな、あたしより、あたしより、自分の仕事優先して……
ちょっとカッコいいからって…モデルやってたからって…調子にのって…
このやろう!!」
首を絞める力は一向に緩まない。
「も……やめ…」
声がでない。怖い怖い怖い。
学校にも家にも。自分の居場所なんかないんだ。
もういっそのこと、このまま殺してくれればいいのに。
でも意識を失う寸前、お母さんはその手を離す。
いつもそう。いつもいつもいつも。いっつもそう。
苦しめるだけ苦しめて、殺さないんだ。

