啓吾はあたしをグイと引き寄せる。
その熱さが痛い。
テルがゴクッと息を呑んだのが分かる。加地さんはまるで素知らぬ顔。
「おまえ程空気読めねー女知らねーよ」
啓吾の瞳が僅かに揺れた気がした。
思わず眉を潜めるあたし。
鼓動だけが意識の及ばない所で、早い。
掴まれたままの右腕がやけに熱くて、溢れる感情の名前をあたしは認める。
――あー、もう、
「いい加減、俺のものになれ」
――認めるから
「好きだ、蒼」
あたしの方が何倍も好きだ。この最低男。
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