細長い煙草を吸い込んで、脳内が侵される感覚を楽しむ。


世間は禁煙ムード一色なのに、抗うようにやめないのって、馬鹿みたいなのか。あたしは何本目か数えもしないタバコの火を消した。


「おまえ程タバコの似合う女いないよな」


からかうような声を毒々と向けるのは、横に座る男。


「嬉しくない」



行き着けの静かなバー。カウンターに座る男女。男は、深いブラウンの髪に、日本人離れした整った顔立ち。多分見つめられただけで抱かれたいなんて馬鹿な事思う程、突き放した色気のある男。醸し出すフェロモンみたいなのが、店の薄暗い雰囲気に充満して、他の女性客なんか綺麗に目を奪われている。


そんな視線など、全く当たり前の様に受け流す男――