「おーい未歩。帰ろうぜ」



突然、美術室のドアが開いたかと思えば、そこには私の幼なじみが立っていた。



私は急いで書きかけの物語を机の中にしまう。



「あっ、うん!」



「ん? 今なに隠したんだよ?」



「な、なんでもないよ! ほら帰ろっ」



「え〜、なんだよ。気になるだろ?」



「いいから!早く行くよ!」



このしつこいのが、私の幼なじみの和泉 航(いずみ わたる)。


生まれた頃から今日までずっと、私、上原 未歩(うえはら みほ)は、

高校2年生になった今でも、航と幼なじみという関係を築いている。



「おい未歩!幼なじみに秘密はなしだぞ」



「だーかーら! なんにもしてないってばっ!」



うるさい航をどうにかはぐらかし、私はこいつの背中をグイグイ押す。



いつの間に、この背中はこんなにも大きくなってたんだろう。



そんなことを思いながら、美術室をあとにした。