「オーケーよ、通りなさい」
「はい、先生」
腹黒王子はまた甘い王子スマイルを浮かべて先生と呼ばれている女の人にそう言うとスタスタと歩いて校舎内へと入っていく。
もちろん、フリーズしている私の腰を掴んだままだから私ももちろん連れて行かれている。
「……芹那さん?」
「…………」
何もなかったかのようなシラっとした顔をして私の顔をのぞいてくる腹黒王子。
私は、その綺麗な顔をぶん殴ってやろうかとも思ったけど頭がそこまでついて行っていなかった。
「あぁ、言っていませんでしたね。あれは朝の恒例と言って先生たちの前でキスをするんです。場所は顔ならどこでもいいんですよ」
へぇー、先生たちの前でキスをね……。
「……有り得ないから!」
そんな羞恥プレイみたいなものをなんで下駄箱の前で、しかも先生が見てる前でやらなきゃいけないのか理解できない。
「これは、結婚したあとの練習らしいですよ。夫婦は夫が仕事に行く時玄関で妻とキスするじゃないですか、それの練習です」
いや、それ全家庭がやってるわけじゃないから……。
そんな一般で当たり前みたいな顔で言われても……ね。
「明日からは杜川くんとなので頑張ってくださいね」
「……え?」
待って、こんな恥ずかしいものを毎朝やるわけ????

