「さて、行きますよ?」
「……どこに……っ!?」
いきなり腹黒王子の手が私の腰にきて、私を自分の方に引き寄せる。
いきなり引っ張られたせいで私の頭は腹黒王子の胸板と衝突する。
「……いきなり何す……っぶぶぶ!」
腰に回っていた手が私の後頭部を掴んでいて無理やり腹黒王子の胸板に顔を押し付けられた。
い、痛いし。
「……八王子 琉宇くん、おはよう。此処を通りたくばこの学園の朝の恒例をやっていただこうかしら?」
高すぎず低すぎないちょうどいい女の人の声が聞こえてその人を見ようにも腹黒王子の手がそれを阻止する。
そろそろ、離して欲しい。
「はい、わかっていますよ。先生」
てか、朝の恒例って?
しかも、下駄箱の前で……。
「……芹那さん」
腹黒王子の声が聞こえると私の後頭部を掴む手の力が弱まり私は顔をあげることができた。
「……な、なんなの……!?」
ち、近いんですけど……。
顔を上げるともうすぐ近くに腹黒王子の顔が近づいて来ていて後ずさりをしようとしたら後頭部を掴んでいた手が私の腰に戻っていて腹黒王子から離れる事が出来なかった。
なんで、手がもう移動してんの?
「芹那さん、愛していますよ。おはようございます」
「……は?」
いや、それさ……普通におはようで良くない?
その前のクサイセリフは完璧にいらないよね?
「……ちょっ……琉宇先輩っ!」
そんなことを考えていたらいつの間にか私に危機が迫っていた。
なんでか知らないけど、腹黒王子の顔が迫ってきていた。
「……大人しく」
そう人の耳元で囁くと私の頬に何か暖かくて柔らかいものが触れるとわざとらしいリップ音が響いて離れていく。
「…………っ!?」

