「あぁ、まだいたんですね。困りましたね」
いや、その顔は困ってないから。
こんなうるさい中でもいつもの笑みを崩さないこの先輩はある意味凄いと思うな。
まぁ、これの元凶は王子先輩なんだけど。
実際、倒れそうになってる子何人もいるし。
「うるさかったら、耳塞いでいて下さいね。その代わり、落ないで下さいね」
多分、私は相当酷い顔をしていたんだろう……王子先輩の肩が微かに揺れていたから。
まず、笑い声を抑えきれてないし。
「……琉宇先輩が降ろしてくれたら問題解決なんですけど」
「…………」
どんなにうるさくても、この距離なら絶対聞こえるでしょ。笑顔で無視って……。
でも、今降ろされたら確実に女の子たちに踏まれる気がする。
こんなにいるのに、良く歩けるな。
目の前すら見えなくなるくらいの女の子たちの群れが私達……てか王子先輩を囲むように集まって来ていて、前なんか勿論見えない。
私なんかより長い足は私が歩いてる時に見る景色の流れるスピードの倍くらい速いんじゃないかって思うくらい速かった。
そして、周りから聞こえてくるのは王子先輩への甲高い奇声と私のことを口々に罵っている声が聞こえてきていた。
知らない子になんで転校早々に悪口なんか言われなきゃいけないのかな?
私だって好き好んでこんな格好でいるわけじゃないし。
もうめんどくさいな……なるようになればいいんじゃないかな。

