美人の一言は強力だった。
ザワザワしていた会場が一気に静まり返る。
きっと、憂の事しか考えてないんだろうけどね。
私の腕の中でスヤスヤ眠っている憂に目を向ける。
憂、良かったね……?
あの二人のあとにやるのやだな……。
目線を前に戻して本気で思う。
青の膝の上に座って箸を持つ桃也は何故か上品で色気が漂っていて、お弁当を持ちながらそんな桃也に困惑している青。
めっちゃ絵になるよ……あの二人。
「……憂のこと怒ってんの?」
「……さあ?俺も芹那乗せたし?」
「うん、そうだね。ならさ、さり気なく俺に掴まるフリして抓るの止めてくれない?」
「あぁ、気付いた?ごめんごめん。んで何食べたい?」
「……何でもいいから早く終わらせたい……」
「そっか、なら……早く終わるように全部口にぶち込むか」
「ねぇ、笑顔怖い……それ本気?」
ボソボソと二人で会話する青と桃也。
さっきから何話してんだろ?
青の顔が困惑してるのは桃也が綺麗すぎるからだと思っていた。
違う理由だったなんて気付かずに。
青の口に次から次へと綺麗な動作で物を運ぶ桃也と早過ぎるのか頬がだんだん膨らんで青い顔をする青。
なんの恨み買ったのか知らないけど頑張れ……青。
そして、終わらないで……。
これは切実な願いだった、私の。
そんな願いも虚しく桃也は二重弁当の中身をサッサと青の口の中に運び弁当が空になって青の口がパンパンになったのを清々しいほどの笑みを浮かべて青の上から降りた。
あぁ……。
次は、私の番だ……。
腕の中でまだスヤスヤ眠る憂に目を向けて溜め息を吐く。

