この家とも暫くの間お別れか。
そう思いながらお父さんの言葉に返事をしながら椅子から立ち上がって学校指定らしい茶色のスクール鞄を手に取りお父さんを見る。



「じゃあ、ママ行ってくるよ!」
「行ってきまーす」



キッチンで洗い物をしてるお母さんに向かってお父さんが言ったあとにいつものように言うとキッチンから水の音が止まっていつものようにお母さんの声が聞こえてくる。


「二人共、行ってらっしゃい!」



その声がいつもより悲しそうに聞こえたのは気のせいかな?
先に歩き出したお父さんの後を追うように家から出るとお父さんは"車取ってくるから待ってて"と言って車庫の方に向かったから家の前で待っているとすぐにエンジンの音が聞こえてお父さんの車が目の前に来た。



この車にもしばらく乗れないな。
助手席のドアを開けると車の独特な匂いが私の鼻を掠める。
意外にこの匂い好きなんだけどな。



車に乗り込んでドアを閉めてシートベルトを付けた私を見てお父さんはこれから私が通う学校へと向かい出した。



「……芹那、ママはきっと寂しかったから今日は玄関まで来なかったんだろうね」



私の好きな曲と車が風を切って走る音しかしなかったのに、お父さんの声がしばらくしてから聞こえてきた。




「……え?でも、此処にしたのはお母さんじゃん」



そう、娘に相談もせずに勝手にこの学校に転校させて寮に入れさせたのは紛れもなくあの母親だ。



「……うん、まぁ……ママなんだけど。それは、芹那のためだし。母親の娘への愛情故ってか……まぁ、そんな感じなんだよ!」



母親の娘への愛情故ね……。
でも、お父さんの説明が下手くそ過ぎてそれは半分くらいしか伝わっていない気がするけど、お父さんの言いたいことはなんとなくわかったつもり。



「……伝わりにくい愛情だね」



お母さんはほんとにいつも強引で愛情が伝わりにくいなって思う。




「まぁ、そんなママも可愛いんだけどね」



隣で運転しながらいきなり惚気始めるお父さん。
親のデレデレした姿や惚気姿はあんま見たくないってみんな言うけど私は別になんとも思わないな。
幸せならそれでいいんじゃないぐらいだし。




「……あ~、良かったねお父さん。今も昔もラブラブで」