「あ、ごめん! すぐに持って来るから!」


そう言って立ち上がった私は、空になったクレープの包み紙を床に落としてしまったらしい。
けどそれに気付かなかった私は、ウォータークーラーから二人分の水を持ってきて、クレープの包み紙に足を取られて、……こけた。
床に飛び散る、二人分の水。


「うわっ!?」

「ちょっと! 香苗、何してんの!?」

「香苗、無理しなくて良いよ」


ハルが私の手を引っ張って立ち上がらせてくれて、舞子が散らかったコップを拾い上げる。
したたかに打ちつけた尻が痛い。


「お客様、大丈夫ですか? お怪我はございますか?」


モップを持った店員さんに声をかけられ、私は苦笑するしかなかった。


「あ~……、大丈夫です…」


零れた水をモップで手際良く、綺麗に拭き取る店員さん。
拭き終わった店員さんに、拾ったコップを二つ渡す舞子。


「香苗、制服濡れてるよ。早く着替えなね」

「そろそろ、寒くなってくる季節だしね。風邪とか怖いよ」


私の制服の皺を直してくれていたハルが教えてくれた。
それに相槌を打ち、風邪の心配をしてくれる舞子。
私は、顔がさらに暑くなった気がした。





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