「俺の? はい、どーぞ」


夏野君は抵抗するかと思いきや、意外とアッサリと見せてくれた。
夏野君の差し出す成績表を覗き込んで、私は愕然とした。
五段階評価の五と四のオンパレードで、それ以外の評定は存在すらしていない。人によって差が出やすい実技教科すらも、漏れなく成績優秀ときた。
この成績じゃあ、道理でアッサリと見せてくれる筈だよ。――私の成績表とは、大違いだ。


「…凄いね、夏野君。どの教科も超成績優秀じゃん」


私はショックで震えたくなるのを何とか押さえ込み、頑張ってその言葉だけを紡ぎ出した。
しかし肝心の夏野君には、そんな様子はちっとも無い。


「そう? ありがと。星崎のは?」

「…はい、これ」


夏野君が手を差し出してくるから、私は嫌々ながらも成績表を渡した。


「どれどれ…? ――――うわ~、これは…」


夏野君の興味津々だった顔が、みるみる引き攣っていく。
私の成績表には、夏野君のとは逆で、"五"の評定は存在していない。殆どの教科は三か四で、英語系の教科に至っては全ての評定がニだった。


「……確かにヤバいな。特に、英語が」

「……だから言ったじゃん」


夏野君は引き攣った顔のまま、成績表を返してくる。





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