ぬぁ!? 何で今ドリンク買いに行くの!? 私だって喉渇いてるけど、このタイミングは違うと思って我慢してるのに。
差し出している右手の腕が痛くなってきて、私は腕を下ろした。せっかくの決意も、勢いを失ってシューっと縮んでゆく。私は怒りを込めてレジに向かう夏野君を睨み付けるけど、夏野君が気付く筈も無い。
暫くレジに並んでいた夏野君は、ドリンクを二つ持って戻ってきた。
そのうちの一つを私の前にトンと置き、もう一つをゴクゴクと美味しそうに飲んでニヤリと笑う。
……あ、また買ってもらってしまった。
「飲みなよ。暑いのに我慢してたら、お互いに熱中症になっちゃうだろ?」
いや違うだろ。ならないだろ。だいたい顔が暑くなっているのは、気温が高い所為じゃないんだから。
…早くも夏野君を好きになった事を、少しだけ後悔してきた。これじゃ、このまま突っ込み続けなくちゃいけなくて、疲れちゃうよ。
「ほら、やりなよ」
「……何を?」
ニヤニヤしてる夏野君が急に言い出すから、私は間抜けな顔で聞き返した。
何を言い出そうとしているのか、全く見当がつかない。
「さっきの。"宜しくお願いします"っていうの」
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