彼が虚勢をはる理由






「……俺ね、昨日、星崎が休みだった時、ずっと星崎の席をチラチラと振り返っちゃってたの。普段は斜め後ろから聞こえる筈の、シャーペンで文字を刻む音も、電子辞書で英単語を確認する音も、簪が揺れる音もしないから」


夏野君が観念したのか、小さな声で話し出す。私は耳を立てる。
取り敢えずハルから聞いた、夏野君が昨日、何回も私の席をチラチラと振り返っていた理由は分かった。
昨日の時間割を思い出す。確か、英語のライティングがあった筈。


「…で、今朝それを、アイツにからかわれたのね。仕方無いから、その理由をサクッと話したら、アイツは"オマエ、星崎が好きなんだろ? あんな英語も出来ないお子ちゃまの何処が良いんだ?"って言うから、そのままカッとなって……」

「ちょい待ち、ストップ!」


私は夏野君の話を一度遮る。聞き捨てならない言葉があったような。
…しかし内容が内容なだけに、こっちが質問するのも何だか照れくさい。


「夏野君は、"好きなんだろ? あんなお子ちゃまの何処が良いんだ?"ってからかわれたんだよね? そこで何で、カッとしなきゃいけないの? "阿呆が何か言ってる"と思って、普通にスル―すれば良くない?」

「あっ」





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