彼が虚勢をはる理由






やっとの思いで、私はその言葉を絞り出す。
夏野君がドリンクを啜りながらこっちを見るけど、私には今の意見を、どんな言葉でまとめれば良いかが分かんない。
でも、伝えなくちゃ。分かってもらわなくちゃ。


「そんな事をする必要は無いよ。…夏野君が向こうの学校で何を経験したかは分かんないけど。標的になる事を避ける為に友達を遠ざけたり、攻撃してくる人達を制圧する必要は、少なくとも此処には無いよ。ウチの学校はもっと平和だもん。…何かトラブルに巻き込まれたり、周りの友達が嫌な思いしちゃったら、一緒に悩んで、一緒に解決すれば大丈夫。だから……」


あぁ、言葉が上手くまとまらない。口がパクパクと、空気だけを吐き出す。
何を話せば、どんな言葉を選べば、夏野君は分かってくれるんだろう?


「……要するに、此処では強がったり虚勢張ったりする必要は無くて、普通に笑い合える生活を送ちゃっても構わない、って事だろ?」


夏野君がまとめてくれた言葉に、私はコクコクと首を縦に振る。
だって、分かってた。夏野君は本当はとても優しくて、友達と仲良くするのが好きなタイプだって事。
優美が教えてくれた中学時代の夏野君の話は、つまりはそういう事だもん。


「要らないんだよ、此処では」





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