君の死を知ったのは、実はそれからずっと後なんだ。

僕たちは二度と連絡を取り合うことは許されなかったから。


それに、僕だって。


あんなことをしてしまった後で、君に近づけるはずはなかった。



高校を卒業して、大学に進学して。

君のことを忘れようと、僕は一心に勉強をしていた。

誰よりたくさん単位を取って、副免も資格もたくさん取って。


だけど、忘れることができるはずはなかったんだ。

あんなに愛した君のことを。



ある年の同窓会に、僕は行く決心をした。

さすがにその頃には、親に止められることもなくて。






行かなければよかった、と思った。







僕が会場に入ると、一瞬会場の空気が冷え切ったような気がしたんだ。


それは、気のせいではなかった。



僕が一番よく話していた、キャッチャーの藤堂。

彼に近づくと、射抜くような視線で睨まれた。



「久しぶり。なあ、ちょっと聞きたいんだけどさ。」



「……何だよ。」



「伊藤って、どうしてる?」



そう言った時の藤堂の表情を、今も忘れられない。

泣きそうな、それでいて怒りに満ちた顔。

そうか、藤堂も沙耶のことが好きだったんだな。

僕はなぜか、そんなことを思った。



「お前、ふざけてんのか?」



「違う。」



「なら、ほんとに知らないのか?」



信じられない、といった顔で藤堂は首を振った。


僕だって、このときにはもう気付いていたよ。

沙耶に、何かよくないことが起きたということ。

それが、僕のせいだということを。



「頼む、藤堂。教えてくれ。……もう二度と来ないから。お前らの前に姿を現さないから。」



「死んだよ。」



「どうして、」



「自殺したんだよ!……お前に捨てられて。」



息を呑んで、僕はそのまま逃げるように帰った。

一体どうやって帰ったのか覚えていない。

だけど、気付いたら部屋で酒を飲んで倒れていた。





ごめん、沙耶。



知らなくてごめん。





どんなに謝っても、どんなに後悔しても。



君はもう、いない―――――