背中に回された腕が、優しく俺の体を包む。

パトリシアの細い腕が、まるで聖母のようだ。




「・・・生きるわ」


だからあなたも、と声が絞られる。


「あなたも生きて・・・」





叶うなら、私のために。

どうか、生きて。







声にならない声をパトリシアが吐き出す。

さっきまで目の前に広がっていた苦い夜の色が、ひどく甘やかに映った。





そうか・・・

そうだよな・・・




生きなきゃ・・・いけないよなぁ。








遠くなった友に向かって語りかけた。



少しだけ、遠いはずの生が近づいた気がした。