「お腹の子の父親は誰なんだ?」


怒りを含んだ父さんの低い声が、集中治療室に響き渡る。


「まさか!

知らないヤツに襲われて……?」


身体を震わせる父さん。


「父さん、それはないよ」


俺は、呟くように言った。


「それはないって、保。

凛は誰かと付き合っていたのか?」


父さんの言葉に、俺はコクンと頷いた。


「誰なんだ? 高校の同級生か?」


俺はチラリと横目でドクターを見た。

 
この話を、ドクターに聞かれるわけにはいかない。


「父さん、とりあえず廊下に出よう」


俺の言葉に、父さんは戸惑いながらも頷いた。