緋色の魅薬

「いいよ……」


声が変にならないように気を付けながら、明はドアに向かって言った。

すると、ドアが少し音を起て、スムーズに開く。

ドアの隙間から、夕飯の良い匂いが漂ってきた。


「お母さんハンバーグ、出来たよ」


意外にも、春樹はご機嫌なようだ。

明は内心ホッとしながらベッドから下りる。


「わぁい!」


そして、明は小走りで部屋を出た。

春樹はそんな明を見て目を細める。

少ししてから、明の後を追った。


ガチャリ、とドアの閉まる音が虚しく響く。





「おいしーい!やっぱりお母さんのレシピは凄いね!」


一口食べた瞬間、明が言った。


満足そうな笑顔で、春樹もハンバーグを口に運ぶ。


「あ、今日は成功かも……」


「すっごいおいしいよ、お父さん」


それから、二人で今日の出来事の報告がてら話していた。

クラスメイトがどうだとか、担任の先生がああだとか、他愛の無い会話をしていると、家の電話がなった。

二人の目が電話に向く。