歌姫桜華





「私が駆け寄って注意したら、その男の子たち逃げちゃって。猫みたら、すごく弱ってて、傷ついてて…。
 通りかかった人が、猫をもらってくれたんだけど……」



 なるほどな。


 それで、“悔しい”のか。



 守ってあげられなかった、っていう悔しさがこの子の涙の理由なんだ。



 とても心の優しい女の子だと思った。





「もっと早く駆けつけてたら、もっと強くて男の子たちを懲らしめられてたら。そう思ったら…泣けてきちゃって。ここに逃げてきちゃった」





 へへっと強がった笑みを俺らに見せた、少女。


 俺らなんかに、強がんなくていいのに。





「ありがとうね、心配してくれて」



「……名前」



「え?」




「俺、奏多!こっちは、紺。名前、教えてくんね?」





 仲良くなりたい。

 本当の笑顔が見たい。



 そう思ったんだ。