歌姫桜華





 多分……私、“あいつ”に少しだけ気があったのかもしれない。




 キスする前もしたあとも、ドキドキが今みたいに止まらなかった。





 1ミリ…たったそれだけでも、人間誰もが持っているその感情を“あいつ”に向けていたかもしれないな…。





 一つ年下だったけど、誰よりも優しくて心配性で…。



 そんな“あいつ”のこと、みんな大切にしてたな。みんな大好きだったな。





 ―――きっとそれは、今も同じなんだろうけど。






 唯一違うのは、私への思いかな…。



 きっともう私を仲間だとは思っていないかもれない。私のこと殺したいと思ってるかもしれない。



 
 ねぇ、私はね…あんたになら殺されてもいいって本気で思ってるよ。




 あぁ、もう一度…“あいつ”の優しい笑顔が見たい。


 ―――そう思うくらいなら、許して……?