天と地の叙事詩Ⅲ Epic of the Ether

いくら寝ても寝足りないチキュを、いつもは部屋付きの侍女であるサヤが起こしてくれるのだが、今日はまだ近くには侍っていないようだ。





(こんなに早起きしたの、ここに来てから初めてだなぁ………)





滑らかで柔らかな夜具に身を埋めながら、ぼんやりとそう考える。




夢の名残が、まだ身体の周りに漂っているような気がした。



いつでもすぐに手の届くところに、チキュの欲しいもの全てがあった、あの頃。



三人の周りには、いつも輝かしい幸福な空気が流れていた。




満ち足りた幻の余韻に浸ったまま、チキュはもう一度瞼を下ろし、穏やかな寝息を漏らし始めた。