ひといきすうっと吸い込んだあと、私はできるだけなめらかに言葉を紡いだ。


「昨夜はありがとうございました」

ぺこっと小さくお辞儀をする。

頭をあげると面食らったような顔をする彼と目が合う。


「いや、別にいいんだけど…」

と、口ごもる彼に私は首を軽くかしげた。


「いや、さ、…ちょっと歩かない?」

少しだけ顔を赤らめて言う彼に、私は軽く頷いた。

彼の制服を無言のまま追っていると、人混みを抜けて住宅街へ続く小路に出た。


すると、先ほどまで私の前を歩いていた彼が歩調を緩めて私の隣にきた。