そして、そこに来たのは蓮斗だった


「お前にいっときたいことがある」


「なんだ?」


「友美さんは本当にいい奥さんだったよ
病気だと知ってても、辛いのを我慢して毎朝、早起きをして、みんなのお弁当をつくって、家事を全てして……あんなにできた奥さんはいないよ」


「……なんで、病気のことを言ってくれなかった」


「琢磨は聞かなかったし、友美さんに病気のことは黙っててほしいと言われたからだ

友美さんは癌が見つかったときにはすでに遅くて、全身に転移していたよ

手術しても体力を消耗するだけで治らないと知っていたからわざわざ手術をしなかった」


……でも、俺にいってくれてもよかっただろ?


せめて入院してくれたらまだ生きてたかもしれないのに


「……友美さんはお前の浮気に気づいていたよ」


「は?」


「気づいていた上で

私は‥あの人を置いていく身だから

と言っていた


きっと、自分が死んでから、琢磨が一人になるのを恐れていたんだろう」


あのときのあの電話は蓮斗とだったのか……


俺は、浮気としか思っていなかった