四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~

私は部屋で一人、考え込んでいた。

分かってたつもりだった。


婚約するってことは、子供のお嫁さんごっこじゃない。

デートして、手をつないで、はしゃぎ合ってるだけの無邪気な遊びじゃないってことを。


でも、私はどこかで甘えていたのかもしれない。

このまま、ずっとこのままで、心だけは夏目のもとから離れずにいられると。


初めてあんな風にキスされて、初めて愛してるなんて言われて。


でもちっとも、ちっとも嬉しくなかった。


そんなんじゃなくて。


夏目と生物の話をしたり、一緒にバスを待ったり、ご飯食べながら笑いあったり……。

そういうことの方がずっとずっと大切だった。



つまりまだ、私は愛なんて知らない、子供にすぎなかったのだ。



消えてなくなりたい、と思った。

魂だけになって、いつも夏目のそばにいて。


そうすれば心の痛みも、何もかもが私から抜け落ちていくだろう。

そして最後に残るのは……ハンカチと私の想い、それだけなんだ。