「先生、」


生物準備室は私の居場所になった。

夏目は前みたいに拒まずに、すんなり迎え入れてくれる。

私のお弁当の威力は絶大みたいだ。


「今日はオムライスだよ!」

「おっ、そうか。楽しみだなぁ。」


夏目の顔がほころぶ。


「先生オムライス好きなの?」

「ああ。好きだよ。」

「じゃあ、また今度作るね。」

「よろしく。」


素直にうなずく夏目が可愛らしくて笑える。


「私からもお願い。」

「なんだ?」

「ヒヨコ、見に来てよ。もうライトがいらないくらい大きくなったんだから。」

「そうか。良かった。」

「ねっ、見に来て。」

「だってお前……、」

「一人で寂しいから!」

「寂しくないって言ったじゃないか。」

「寂しいの。」


夏目は困った顔をする。

私は夏目を困らせるのが得意だ。


「見つかったらまずいだろ。」

「ただの家庭訪問だよ。」

「まずい。」

「お願いっ!」


夏目は、困ったように考え込む。


「ああ。でも、今すぐじゃないぞ。いつか、な。」

「約束だよ。」


この時の約束が、この後でどんな結果を引き起こすかなんて、私は知る由もなかったんだ。