それからというもの、私の周りの雰囲気は、ぎくしゃくしたものになってしまった。

一部始終を見ていたクラスメイトは、私と夏目と篠原さんの間にある、何かに感付いてしまった。
直接聞いてくる人だっている。

でも私は無言を貫いた。

そんな態度がさらに疑惑を呼んだのか、いつか私の周りには、悪いうわさが飛び交うようになった。


でも別に大丈夫だ。
私はこのくらいのこと、大丈夫だ。

自分に言い聞かせる。


放っておいてよ。


分かっている。
私は悪魔だと。

今更始まったことではないのだ。
ずっと前から、生まれた時から、私には悪魔の血が流れていたのだ。


そんな中、努めていつもどうりに接してくるのが智だった。
いろんな噂を聞いていないわけじゃないのに。
でも私のことを信じてくれる。

何事もなかったかのように、笑顔で接してくれる。


「おはよっ!詩織!」

「……おはよ。」


そんな智に、私は罪悪感を抱いていて。

おはよう、そう言おうとすると、喉の奥がひりひりして何も言えなくなるんだ。


「詩織、今日の生物の宿題のノート貸して!お願いっ!」

「いいよ。」


ノートを渡す。

ノートなんて、何百回でも貸すよ。
智にだったら喜んで貸す。
わざと間違えたりなんて、卑怯なことはもう絶対しないから。


だから……、許してほしい。


それから、分かってほしい。


私が本気で、夏目を好きだという気持ちを。


知っている。智は笑って見せながら、目は笑っていない。
智も苦しいんだ。
友達を心から信じることができなくて。


ごめんね。


なんども言おうとして、言えなかった。

言わなければ何も伝わらないんだと、分かっていたくせに。

私は、周りの人や自分自身を欺くことによってしか、生きていけない生き物のくせに―――