"ワインお作りします"

路地裏にある小さなお店。
その入口にある看板。

「ここね…。」

最近、近所で少しだけ有名になり始めたワイン屋さん。
何でも叶えてくれるらしい。
ホントかどうかは知らないけど。

誰からもしあわせそうに見える私。
誰にも言えない事がある。

だけど。

一度だけ。
確かめたい。

「いらっしゃいませ。」

思い切って中に入ると中は普通の喫茶店。
優しい声がして見ると、どこかで見たような顔の男性が居た。

「……。」

店員さんは私を見るなり少し止まった。

「あの…。ここ、噂の…。」

私の問い掛けに店員さんはハッとしたように笑顔を作った。

「噂なんてあるんですね。どうぞお掛け下さい。」

笑顔で勧められるまま席に座る。
座ってすぐ出してくれた紅茶に安心した。