ほんとにそんな事が出来るのなら...
一つだけ、後悔している事がある。

「何処へでも何時でも戻れます。」

店員さんは確認するようにそう口にした。

「戻れるのなら、3年前に。」

大切な人を失った時間まで。

「解りました。」

店員さんはそう答えると後ろの棚から葡萄の入った瓶を取り出した。
それを瓶にそっと入れる。
入れた途端、不思議な事に瓶の中で葡萄はゆっくりと回っていた。
葡萄はだんだん綺麗な色を瓶の中で作る。
瓶の中が赤く染まった頃、店員さんは不意に私を見た。

「後は貴女からお代を頂けばワインは完成です。」

「お代ですか?」

そういえばどこにも書いていないし、聞いてもいない。
ワインって買うのも高いけど作るのって...

「これは普通のワインではなく、魔法のワインです。ですからお代はお金ではないんです。」

私が悩んでいると店員さんは笑顔で付け加えた。

や、お金ではないって言われても...
ますます困ります。