"ワインお作りします"
路地裏にある小さなお店。
その入口にある看板。
きっと普段なら目にも止まらない。
今日の俺は余程疲れていたに違いない。
最近、ワインなんて飲んだ事ないな…。
仕事仕事でそんな余裕なんてない。
だけど、たまにはいいか。
そう思って扉を開けた。
「いらっしゃいませ。」
中は喫茶店みたいになっていた。
店員さんは男性。
ラフなシャツにベストを着ていた。
「どうも。」
勢いで入って来たものの、どうすればいいか解らず、店員さんに会釈。
「どうぞ、お掛け下さい。」
そんな俺に店員さんはカウンター席を勧めた。
カウンターに座るとサッと珈琲が出てきた。
まるで喫茶店だ。
とりあえず出された珈琲を飲むと少しホッとした。
「どの瓶がお好きですか?」
一息ついていると不意に店員さんの声がした。
彼はニコニコと虹のような7つの瓶を俺の目の前に並べている。
そうか。
そういえば、入り口にはワインお作りしますの看板があった。
中に入ると喫茶店のようで忘れていた。
「それじゃあ…この黄色かな。」
向日葵のような綺麗な黄色の瓶を指した。