俺が願ったからーー?

そんな馬鹿な話と思えど、こんなフィクション(馬鹿馬鹿しいこと)が起きている手前では、一概に違うとは言えない。

ケータイを持つ手が止まる。このまま、『夜鞠くんとずっと一緒にいる』とメールしてしまおうか。

邪心が巡る。
彼女をずっとここにいさせようと、この事態を“好機”と受け取っていた。

彼女とて小さくなったことを悲観せずーー

「聖……?」

声をかけたのは、鼻をすする音が聞こえたから。

花の種のような頭が深く下がっている。

「聖、聖……」

返事がないのは察している。
泣いていたんだ、彼女は。

楽観視し過ぎた。彼女がここにいる事実に舞い上がり、彼女の“本音”を無視していた。

いやーー

「そんなに、帰りたいのか?」

見たくなんかなかった。
俺以外の居場所に帰りたいと泣く彼女なんか。