「まさか、こんなことって」

有り得ないとすれば、俺は目を潰さなくてはならない。

彼女が小さくなるだなんて幻を映す不良品などない方がいいだろうが。

「現実見てー、私は見たよー」

手を上げて、小さな主張をする彼女。
どうしてそうも冷静でいられるのか分からないが、俺が焦燥し、彼女を不安にさせてはならない。

落ち着けばいい。彼女は、彼女。どんなに小さくとも。

「聖、俺のこと、分かる?」

「体の心配の次は、頭の心配?」

「答えて」

「……分かるよ。夜鞠くんは、私の大好きな人だよ」

ああ、“これ”でいい。
間違いなく彼女だ。いっそ、俺のこと以外覚えてなければ都合いいのに。

「で、早速だけど、夜鞠くん。私のバックから、ケータイ取ってくださいな」

物事はご都合主義では進まない。こんなフィクションみたいなことが起きながらも。