最初、蝶でも迷い込んだのかと思った。
だが、視界が鮮明になるにつれ、枕元の蝶はーー
「ひ、ひじ……っ」
驚き過ぎて舌噛んだ。おかげで目が覚め、夢じゃないと認識出来る。
「どうしよう、夜鞠くん。私、南くんの恋人になっちゃったよ」
「いやいやいやっ、聖は俺の恋人だから!って、そうじゃなくて!」
壁際までゆっくりと後退し、枕に“ちょこんと座る彼女”を見下ろした。
南くんの恋人、そんなドラマが昔やっていたと彼女から話だけは聞いていたが。
「なんで、聖……そんなに小さくなってるの」
リアル親指姫だ。
いや、下手したら、親指以下のサイズ。
まだ寝ぼけているのかと自分の頬をつねるが、痛い。
「冷静沈着な夜鞠くんでも、焦る時があるんだねー」
「逆に冷静でいられる聖が凄いよ。そんな小さくなって」
「起きたらこうなってた」
「順応し過ぎ……。どこか他には変わったところ、具合悪いとか痛いとことかないのか」
大丈夫かと彼女目線に合わせようとすれば、変態ーと胸を隠された。
「ちがっ、そんなつもりじゃ!」
「分かってるけど、あたふたな夜鞠くんが可愛くて」
布団の裾で体を隠す彼女。肝心の服は布団の下に残されたままだった。抜け殻のようなそれを手に取り、改めて彼女に渡す。
「ダイエット成功し過ぎました」
当たり前のことながら着れない服。それでも寒さを凌ぐのに来てほしいと頼めば、裾のみを体に巻きつけてくれた。


