「…え?絵で賞を取るには、どうすればいいかって?…椿君、それ本気で聞いていますか?」

美術部三年、冬馬京介は、油絵を描く手を止める事なく淡々と聞き返した。


放課後の美術室…この日は、五人ばかりの部員が来て作品を仕上げていたが、皆それぞれ目線が合わない所にイーゼルを置くと、広い部室の窓際や角を好んで作業をしていた。

独特の空間を作って絵を描いていて、話しかけづらいフンイキをかもし出している…

が、椿は気にする事なく、パーテーションで仕切った空間にモチーフを組み、油絵を描いている冬馬のいる所へ行くと、イスを持って来て面白そうにその様子を眺めるのだった…