真摯な眼差しで此方を見る少女は、やはり昔と変わらず強がりでまだまだ放ってはおけないことを痛感した。
「ただし」
形の良い唇は小ぶりで、その唇に口付けされたのだと思うと心做しか頬が紅くなるのを感じる。
「私の、姉になりなさい」
静かに告げられた言葉は優しいが、拒絶を許さない強さを隠していた。
林檎は少し目を丸くするとすぐに柔らかい笑みを浮かべ
「…………貴女が望むなら、私は姉にも母にもなりますよ」
言うと、今度は林檎の方から檸檬を抱き寄せた。抱き寄せられた檸檬は少し身を捩ると背中に腕を回す。
「……なら、今此処で名前を呼びなさい」
それは執事の真意を探るための質問だと言うことを理解した林檎は、この小さな主に気付かれないよう抱き締める力を強めた。
「早く……」
「…………檸檬」
微かに、囁くように漏らした言葉を今度はちゃんと少女に聞こえるように言う。
「檸檬、……星宮 檸檬(ほしみや れもん)」
「っ、誰がフルネームで呼べって言ったのよ・・・!!」
互いに抱き締める力は強く、ふたりの間に心地の良い風が吹く。
「……明日からは、姉として厳しく行きますよ?」
「ふん。望むところよ」
くすりと笑うとそれ以上生意気な言葉を言わないように唇を塞いだ。
-END-

