もうそれが誰かなんてすぐに分かってしまう


そもそもこうやって顎を私の肩に乗っける人なんて一人しかいない



「総司..、巡察は終わったのですか?」


小さな溜息をつきながらそう問うと、”勿論”と言って今になっては恒例の爽やかな笑顔をこちらに向ける


「で、慶は何が”どうしよう”なのかな?」


私の頬を気持ち良さそうに撫でながら聞く総司


「....さあ?」


言いたくない、これだけは言いたくないと本能がそう叫ぶ私自身は、あえてとぼけて見せる



が...それは総司にとって気に食わない言の一つらしく、不貞腐れの表情で私を見る



「ふーん、とぼけるんだ?」



「と、とぼけてなんかいませんけど?」



いつだって、冷静沈着で表情や声色を変えないで嘘をつける私だってこの総司の表情は怖い



「ちゃんと、僕の目見て言いなよ」


「嫌、です。」


あえて”嫌”を強調するとさらに機嫌の悪くなる総司



だって仕方ないじゃない。
これだけは誰にも知られたくないんだもん




私は背伸びして総司の額をツンっ、と人差し指でつつくと



「私にだって、秘密ぐらい作らせて下さい。
じゃないと...、総司の側にいられないじゃないですか。」

そう言ってその場を去ってゆく



まさか、総司がそんな私を見て頬を染めているなんて知らずに