軽薄な字。



兄の死を告げた忌々しい字




私はその文を広げることもなければ読むこともなく、引き出しの奥にぐしゃり、と音を立てしまい込んだ




きっと、ろくな事など書いていない




見ても見なくても一緒よ




だってどうせ綴られているのは表だけの粗末な言葉なのだから




兄は立派な人だった



私の自慢でもあった




誰よりも誠実で誰よりも武士になりたがっていた



だから京で浪士組というものの隊士募集の噂を聞いた時に、兄は喜んでそれに行ってしまった



止めたりなどはしなかった、いいや、したくなどなかった



だって兄が武士になりたい事はずっと昔から分かっていた事だから